衝動

月に一回くらいの頻度で全ての責任を放棄してしまいたい衝動にかられる。

 

ひとまとめに責任と言ったが、別に仕事をバックレてしまいたいだとか友人家族との関係を不義理にしたいだとかそういう破滅願望を言っているのではなく、もっともっと手前の軽度な事柄のことを言っている。

やったほうがいいけど別にやらなくても大損するわけじゃない(とはいえやったほうがいい)事ってのがいっぱいあって、きっと誰にでもあるものなのだろうけども、それをぶん投げて堕落したいと思ってしまう。

 

 

趣味の一つとしてゴルフをやっている。練習することは苦ではないし、親しい間柄の人たちとコースを回ったり、試行錯誤してフォームを考えたりしながら体を動かすのは好きだ。

しかし、時折誘われるゴルフコンペに参加するのは気が重い。自分よりも遥かに腕がよく、ましてや顔も名前も知らないような人と組んで、及第点とも言いにくいような自分のプレーを見られながら半日近くかけて18ホール回るのは、人見知りで人付き合いが苦手な面も相まって、とてもじゃないが気楽な行事とは言い難い。

つまるところ、コンペという枠組みの中でみたときの自分の技術が、他人と比べて極めて低いがゆえに気が重くなってしまうのであって、頑張って練習して人並のスコアが出せれば、さほど苦にはならないはずだ。(コミュニケーションが苦手なのは呑み会でも一緒なので技術と人付き合いの二重苦から一つ軽減されるだけでだいぶ違う)

「コンペについてくために練習をしなくてはならない」は、趣味か?責任か?と考えると、両方でありながらも確実に責任の比重が重たいように感じないだろうか。

そう考えたとたんにもうゴルフなんてやめてしまおうかと思ってしまう。なぜならば「やったほうがいいけど別にやらなくても大損するわけじゃない(とはいえやったほうがいい)事」だからだ。

 

 

趣味といえばもう一つ、ピアノをやっている。楽器が弾けることに対して強い憧れがあったので2年前から始めたのだ。最近は、人に聞かせられる代物ではないにしろ、弾ける曲も増えてきて、牛歩ではあるが憧れに近づけている実感があり充実している。

過去にギターを触れた時の経験から自分は独学でなにかを成し遂げられる人間ではないと分かっていたので、音楽教室で月3回のレッスンを受けている。毎回ほどほどな課題を課されるのでそれをクリアするためにしょっちゅうピアノに向かうことになるので自然と上手くなる。趣味としてのピアノを学ぶコースの為、失敗したところで厳しく罰されるわけではなく、しかし達成できればそれは自信として糧になるという仕組みは独学のそれとはまったく別物で、人から習うという策は効果てきめんであったといえる。

しかし、月一回のかの衝動は、自らがすすんで課した責任にすら牙をむく。なぜならば「やったほうがいいけど別にやらなくても大損するわけじゃない(とはいえやったほうがいい)事」だからだ。実利をもたらしてくださっているものにすらそう考えてしまうのが、この衝動の嫌なところなのだ。

 

 

詳しくは書かないけれど、ほかにもこういった、俯瞰でみれば微小な責任というのがいくつもあって、それを全部投げ出してしまいたいという衝動がふいにわいてしまうのだ。

定期的な衝動なので、なにかしらのバイオリズムのせいかもしれないし、気候とか気圧の変化のせいかもしれないし、ただの気分の浮き沈みなのかもしれないが、一度こうなってしまうとたてなおすのに苦労するので、なにか原因があるならば知っておきたい。

 

みんなこうなのだろうか。もしそうなら、どう乗り越えてるのか、どう避けてるのか、知っているなら教えてほしい。